こんにちは、婚活アドバイザーのサヤカです。
今日は、お子さんの婚活がなかなか実を結ばないとお悩みのご両親に向けて、少し踏み込んだお話をさせてください。「うちの子、容姿だって悪くないし、性格だっていい。なのにどうして結婚に本気にならないの?」——そんなお声を、これまで数え切れないほどお聞きしてきました。
実は、その理由のひとつが「推し活」にあるのです。
ある日の境内にて
私事ですが、私は週末に地元の小さな神社のお手伝いをさせていただいております。先日、二十代後半とおぼしき女性がお参りにいらっしゃいまして、鞄からそっと小さなぬいぐるみを取り出し、本殿の前でせっせと写真を撮っていらっしゃいました。デフォルメされた可愛らしいお顔立ちのアイドル……らしき何か。私には誰だかさっぱりわかりません。けれども彼女は満面の笑みで、角度を変えて何枚も何枚も撮っていらっしゃる。正直に申し上げますと、神域でその光景を目にしたとき、私はぞくっとしてしまったのです。ああ、この方は何かをこんなにも大切に「育てて」おられるのだな、と。
脳は「本物」と「フェイク」を区別しません
人間の脳は、進化の長い長い過程のなかで、「子を育てる」という行為に強い快感を結びつけてきました。子どもの笑顔を見る、成長を見守る、世話を焼く——これらは私たちの遺伝子が何百万年もかけて磨き上げてきた、強力な報酬システムです。家族を持ち、子を育てることが種の存続に直結するからこそ、脳はその行為に対して、たっぷりと甘いご褒美を用意しているわけですね。
ところが、現代の資本主義というのは恐ろしいもので、この脳の仕組みを巧みに利用したビジネスを次々と生み出します。「推し活」は、その代表格と言ってよいでしょう。
「推し活」とは何をしているのかを冷静に分解してみますと、対象の成長を見守り、お金と時間を投資し、応援し、悲喜こもごもを共に味わう——これは構造的に「子育て」とほとんど同じなのです。違うのは、夜泣きもおむつ替えもなければ、反抗期で胸を痛めることも、進学費用に頭を抱えることもない、ということ。つまり「子育ての美味しいところだけを抽出して商品化したサービス」、それが推し活の正体なのですね。
かつてジャニーズに夢中になり、コンサートに通い詰め、ペンライトを振り、メンバーの誕生日をお祝いしてきた娘さん。今はぬい活に熱中して、推しのぬいぐるみを連れて旅行に行き、カフェでパフェと一緒に写真を撮っている娘さん。彼女たちは、脳のなかでは「すでに我が子を育てている」状態なのです。
だから婚活にエネルギーが向かない
ここが本当に厄介なところです。脳がすでに「子育て報酬」を擬似的に受け取ってしまっている人は、本物の結婚や出産に対する飢餓感が、どうしても薄れてしまうのです。
婚活というのは、率直に申し上げますと、つらい活動です。お見合いで気の合わない方とお話しする、こちらから断る、向こうから断られる、いいご縁に恵まれない時期が続く——精神的な消耗は相当なものです。そのつらさを乗り越える唯一のエネルギー源は、結局のところ「自分の家族が欲しい」という本能から湧き上がる渇望なのですが、その渇望が推し活で先に満たされてしまっている方は、「もうこれでいいかな」「無理しなくてもいいかな」となってしまうのです。
ご両親から見れば「逃げているように見える」かもしれません。しかしご本人にしてみれば、すでに心は満たされているのですから、わざわざ苦労する理由がない。これは怠惰ではなく、脳の合理的な判断なのです。
ペットも同じ構造
実はこの構造、推し活だけのお話ではありません。ペットも全く同じです。とくに独身の女性が一人暮らしで猫を飼い始めるというのは、婚活的にはかなり危険な兆候だと、私は常々申し上げております。
世に言う「猫おばさん」という言葉を、皆さまも一度はお耳にされたことがあるでしょう。独身の女性が複数匹の猫と暮らし、生活がすっかり猫中心になっていく、あの状態のことですね。猫は確かに可愛らしい生き物です。無条件にこちらを必要としてくれて、夜になれば膝に寄り添ってくれる。一人暮らしの寂しさを、見事に埋めてくれる存在です。
しかしまさにそれが落とし穴なのです。寂しさが埋まってしまえば、苦労してパートナーを探す動機が失われます。生活リズムも猫中心になれば、デートの時間を取ること自体が億劫になっていく。「この子を置いて婚活なんてできない」と真顔でおっしゃる方は、何人もいらっしゃいます。可愛がっておられる気持ちは尊いのですが、ご本人の人生という大きな視点で見ると、ご縁から遠ざかる装置になってしまっているのです。
親御さんにできること
では、ご両親はどうすればよいのでしょうか。
まず、頭ごなしに「推し活なんてやめなさい」と叱るのは、ほぼ確実に逆効果です。すでに脳が報酬を受け取っている状態の方に「やめろ」と言っても、禁断症状を呼ぶだけで、親子関係がこじれてしまいます。
そうではなく、「あなたが推しに注いでいる愛情と時間とお金は、本来あなた自身の家族のために用意されていたものなのよ」ということを、穏やかに、けれども繰り返し、伝えていってあげてください。脳が引っかかっているバグの存在を、ご本人に自覚させるのです。「私は今、フェイクの満足で本物の幸せを取り逃しているのかもしれない」と気づいた瞬間から、ようやく軌道修正が始まります。
それから、推し活やペットを「完全に絶たせる」必要はありません。問題は、それが人生の「主食」になってしまっていることであって、「おやつ」程度の位置づけならむしろ人生を豊かにしてくれます。本物の家族を作るという主目標を取り戻し、推し活はそこに添えるささやかな楽しみへと位置づけ直す——この再配置こそが、なによりの鍵になります。
お子さんの幸せを心から願うご両親だからこそ、どうか焦らず、けれども諦めず、根気強く向き合って差し上げてください。
それでは、また次回お会いしましょう。サヤカでした。